卯年のご挨拶

昨年の暮れ、お世話になっている方が、家族旅行で、宝塚からはるばる山口…湯田温泉に来て下さいました。ランチをご一緒したあと、7歳のいぶきちゃんが、学校で習ったという歌を私に歌ってくれました。歌い終わったいぶきちゃんが言いました。
「あのね、それでね、わからないとこがあるの、うたの中でね、
『ねころんで空をみていると、くもがいろんなものにみえてくる〜、だけど そんなじかんは今だけなのかな』ってとこなんだけどね……。
それって、今だけなの?大人になったら、そうゆうふうにはみえないの?そうゆうじかんはないってことなの?」
昨年、小学校の校歌制作を依頼された頃から、特に気になっている、童謡の歌詞に対する疑問が、あらためてクローズアップされました。それは、特に最近の歌は、大人が大人の視点から「子供のふり」をして書いているものが多いということです。いい童謡は、決してそういうことはありません。
ぞうさん」について、次のような解説を聞いたことがあります。
【「お鼻が長いのね?」と問われた子供のゾウは、得意そうに「そうよ かあさんも」と答えます。そして、「誰が好きなの?」と聞かれると、待っていたという感じで「あのね、かあさんが〜」と言います。この、「そうよ」と「あのね」ということばは、子供ならではの目線、価値観を表現しています。大人にとってはどうってことがないものに、子供は特別の意味を見いだします。とても短い歌詞なのに、作詞をした「まどみちお」氏の本質をとらえる手腕がまぶしく輝いています。】
童謡や子供向けの歌を創る時は、聞く者がまっさらな心の持ち主であることを、強くイメージしなければなりません。だからこそ、大人の歌以上に、細心の注意を払わねばならないのだと思います。文字通り「子供だまし」は許されないのです。
2010年は、校歌や「山口でうまれた歌」の制作、合唱団用の編曲など、今までの自分の活動とは趣が違った歌の創作にも携わることが多い年でした。2011年もそれらの活動を、もっと積極的に広げてゆきたいと考えています。
全国の皆さんに上質な歌の種を蒔けるように、うたた寝をせず日々精進いたします。本年もどうぞよろしくお願い致します。
猫髭うたたね舎/落合さとこ/湯田温泉の足湯場より