保護者失格


先日、久しぶりに、SLやまぐち号に乗った。
新山口へと向かう帰りの便。
空いている席に移動し、窓を開け放って身を乗り出す。
極度に早くはない速度で走るSLの風は、とても心地よい。
緑の景色がガタンゴトンと後ろに流れてゆく。
ゆるやかなカーブにさしかかると SLがよく見える。
頑張って走っている。
汽笛が時折なる。
それを全身で受ける。
泣きそうになる。
黒い煙が空にひろがり流れてゆく。
時々灰が目に入る。
真っ白な水蒸気は線路に熱くふきつける。
必死に車輪が回り続けている。
生き物のように動くSLも、心地よい速度で流れる景色も、
このまま、ずっとずっと見ていたい。
車窓からの風も、この心の動きも、
このまま、ずっとずっと感じていたい。
こんな時は、写真をとる気には全くならない。
だからとらない。
それでいい。
……どれくらいの時間、こうした幸せを満喫しただろう。
はたと振り返り、気付いた。
これは姪達にSLを案内する旅であった。
姪達「さっちゃん、なりきってるぅ」とニヤニヤ。
保護者失格でゴザイマシタ。