小さな裸足

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7月の生配信ライブで朗読した書きおろしエッセイが
好評だったので、こちらにも、ちゃっかり載せておきます。

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裸足が気持ち良い季節。
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そんな切り口から、7月の「ラジオ招き猫」では
「小さな裸足」という作品を聴いてもらった。
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私の22.5センチの小さな足は、母親譲り。
指の形や爪の生え方までそっくり。
そんなことを歌った歌で、1999年に発売した
私の初めてのソロアルバムのタイトル曲でもある。
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アルバムの発売日は、当時、私の姉のところにやってきた
赤ちゃんの、出産予定日に決めたのだった。
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姉もまた、私と同じ母親譲りの小さな足だ。
三人の裸足を並べたら、誰が誰の足だかわからないくらいだ。
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ところが顔については、姉と私はまるで似ていない。
姉の幼稚園の頃の写真は、目がくりくりしていて可愛いの一言につきる。
それに引き換え、私の写真は、仏頂面でまるでお猿さんみたいだった。
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話はぐりっと戻り、姉のところにやってきた赤ちゃんは、期待を裏切り、
アルバム「小さな裸足」の発売日より1日早く、この世に登場した。
その後、すくすく育ち、今や21歳の女子大生!
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そして、この21歳女子大生が、最近になってよく口にする言葉がある。
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私のマスク姿の写真を見て、「マジ、ママかと思った」。
私がピアノ弾き語りをしている横顔の写真を見て「ほんと、ママかと思った」。
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「ママかと思った」
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言われてみれば確かにそうだ。
改めて自分の写真を見てみると「マジ、姉かと思った」
この歳になって、目元や顔つきが、似てきたようだ。
21歳女子大生がこの世に登場した頃には、予想もできなかった展開だ。
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そして、わたしは最近きづいた。
21歳女子大生のふとした表情が、彼女の祖母、つまりは
私の母と、そっくりな時があることを。
そんな時、私は、ひとり、つぶやくのである。
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「マジ、ママかと思った」。